卒業した先輩
インタビュー
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- 「たくさん働いて、たくさん学ぶ楽しさを実感できた」
溜口 功啓 さん 28歳
- 「たくさん働いて、たくさん学ぶ楽しさを実感できた」
2021年3月教養学部(心理と教育コース)卒業
栃木学習センター所属 ※2021 年3月時点
高校を卒業後、放送大学へ入学。現在は農園を経営。
Q.入学理由を教えてください。
高校卒業後に専門学校に通っていましたが中退しました。
その後「大学を出ておきたい」という気持ちがずっとあったので、実家の農業を手伝いつつ、大学探しをはじめました。
当時は心理カウンセラーを目指していたので、臨床心理士の資格を取るために心理と教育コースを選びました。
Q.放送大学へ入学するきっかけを教えてください。
心理カウンセラーを目指すうえで参考にしていた本(『心理カウンセラーを目指す人の本〈’15年版〉』(新川田譲、2014、成美堂出版))に、臨床心理士の資格を取得できる大学が掲載されており、そこで放送大学を知りました。
インターネットで調べたところ、学費が安く、通学せずに「好きな時間に勉強して、好きなだけ勉強できる」というのが魅力に感じました。
入学してからも「自分の好きな時間に勉強できる」というのが最大のメリットでした。
Q.大変だったことはありますか?
中学1年生から不登校で、高校でもあまり勉強をしていなかったため、そもそも学力が無いと感じていました。
漫画を読むのにも苦労するほど字を読むのが苦手だったので、入学当初は印刷教材を読むこと自体が大変でした。
乗り越えた方法は、はっきり言うと「気合と根性」です。
本当に死ぬほど勉強しました。最初の2年間は、枕元に印刷教材を置いて朝起きたら読み始め、ご飯とトイレの時間以外は印刷教材や本を読んでいるというくらいでした。
「人のために何かしたい。役に立ちたい」という思いが原動力となり、必死に食らいつきました。
その結果、4年で卒業に必要な124単位はすべて取り切ることができました。
卒業論文を書きたいと思い、実際には1年間卒業を延ばして、最終的には155単位も取っていました。
最初はがむしゃらに印刷教材や本を読んで勉強していたのですが、だんだんと読書や勉強が趣味になっていき、今では、家に床が抜けそうなくらいの本があります。
Q.放送大学で学んでよかったことをおしえてください。
ひとつは、面接授業を受けるために、いろいろな都道府県に旅行も兼ねて行けたことです。
学割を使って行けたので、浮いたお金で現地のおいしいものを食べるのが楽しみでした。
でもやっぱり、卒業までの5年間を通して一番実感したのは「たくさん働いて、たくさん学ぶ」ことの楽しさにつきます。
最初の2年間は、「勉強一筋」と決めて働かずに勉強していたのですが、3年目は、実家の農業を少しやりながら勉強メインで過ごしました。
でも4年目からは、本格的に仕事もして収入を得ながら学ぼうと思い、自分で農業の新規の仕事を持ってくるなどして本格的に仕事をしながら勉強しました。
そうやって、働いていろいろな人と関りながら勉強していた時が、一番充実していました。
収入があるので余裕も生まれ、精神的にも一番よかったと思っています。
現在も、農園を経営しながら人間と文化コースで学んでいますが、気象学や植物学、フードシステムなどについて勉強して、自分の仕事に生かしたいと思っています。
Q.卒業研究(卒業論文)は書かれましたか?
卒業研究は、『大国主の神話のユング心理学的解釈』というテーマで執筆しました。
日本神話について心理学的に分析したのですが、そこで日本人の心には、土と関わることがものすごく大事だということを知り、「自然と関わった仕事がしたい」と思うようになりました。
将来は、今の農業の仕事を続けつつ、40歳までに放送大学の大学院に入学して臨床心理士の資格を取得し、農園経営とカウンセリングを両立した「園芸セラピー」のようなかたちでやっていければと考えています。
病んでいる人や、不登校の人に、土と関わることで癒されて良くなってもらいたいです。
Q.おすすめ科目を教えてください。
「精神分析とユング心理学(’17)」「心理臨床とイメージ(’16)」(閉講科目)「錯覚の科学(’20)」「感情・人格心理学(’21)」「心理カウンセリング序説(’21)」「日本語リテラシー(’21)」「臨床心理面接特論Ⅰ,Ⅱ(’19)」「投影査定心理学特論(’15)」(閉講科目)「精神医学特論(’16)」「臨床心理学特論(’17)」「心理学実験1.2.3(面接授業)」「卒業研究」等。
大学院の科目も含まれていますが、大学院修士選科生になれば受講することができます。
卒業研究は、大学で学んできたことをすべて使って全力で挑みました。とても楽しかったです。
どれも今の僕の自己を形作ってくれた、学んでいてとても面白かった科目なので、難しく考え過ぎずに楽しんで受講してほしいです。
また、履修の際には無理のない範囲で、とお伝えしておきます。
私の場合は、初めの学期は4科目におさえ、徐々に科目数を増やしていき、結果的に4年間で無事124単位を取り切ることができました。
しかし周りの方からは、1学期で30科目ほど登録したけれど結局途中で挫折してしまった、などという話もよく聞きました。
また私自身も、科目を多く取りすぎた学期は「勉強しなくちゃ」という焦りと緊張感で私生活がおろそかになりがちでした。
せっかくのやる気も、学費も、そこで挫折してしまったら本当にもったないことだと思います。
後輩の皆さんにはぜひ、自分の限界を知り、生活にゆとりを持つことも忘れず、計画的に履修していってほしいなと思います。
➤➤後輩へメッセージをお願いします。
高校生までは勉強が嫌で仕方なかったのですが、放送大学は自分から望んで入ったので、本当にものすごく勉強しました。
そして卒業後にも再入学をしたので引き続き放送大学にお世話になっています。そして仕事が落ち着いたら、放送大学大学院へ入学したいと思っています。
放送大学は年齢層が幅広いので、いろいろな人と出会うことができました。それも含めて「開かれた大学」なのでしょう。
放送大学は通信制大学ですので、もちろん勉強だけに専念することもできますし、「社会人兼通信大学生」という特殊な立場で、働きながら勉強をすることもできます。
後輩の皆さんには、ぜひ「よく働き、よく学べ」とお伝えしたいです。
学んだことはどこかで必ず生きるし、勉強をがんばってやり遂げた達成感というのは、必ず生きる自信につながります。これは私自身の経験から言えることです。
皆さんの放送大学生としての生活が有意義なものであることを願います。
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